こんにちは、Nagiです。
当サイト(Nagi Rhythm)は現在1500記事以上投稿しており、過去に様々な読書レビューをご紹介させていただきました。
今回は、朝井リョウさんの話題作『生殖記』を読了したので、その感想を深掘りしてお届けします。
まず一言で感想を述べるなら、「こんな小説、今まで読んだことがない。」というかんじでした。
読み進めるうちに、自分が何かの“観察対象”になったような、不思議な読後感が残る作品でした。
物語らしい展開はなく、さまざまな人間たちの営みを淡々と描写していく「記録」のような文章。まるで、社会という生態系を顕微鏡で観察しているような感覚に陥ります。
本記事では、以下の3つの視点からこの小説を考察します。
- 人間は誰かと寄り添いたくて寂しい生き物
- 人は結局、動物に変わりがない
- 自分の行動を俯瞰して考えるきっかけになった
人間は誰かと寄り添いたくて寂しい生き物
正直に言えば、私は普段あまり「寂しい」と感じることがありません。けれど『生殖記』を読んでいると、人間とは本能的に誰かとのつながりを求め、肌を重ね、言葉を交わしたい生き物なのだということに改めて気づかされます。
この作品には、LGBTQを含む多様なバックグラウンドを持つ人物が登場します。誰もが「分かり合える誰か」を求め、時に傷つき、時にすれ違いながら、それでも関係性を築こうともがいている様子が、とても丁寧に描かれています。
また、結婚や子孫繁栄というテーマも随所に登場し、本能と社会通念の間で揺れる現代人の姿が浮き彫りにされていきます。
- 結婚は本能なのか、制度なのか。
- 子どもを持たない人生の意味は?
- 浮気はなぜ“してはいけない”のか?
ふと、「自分はいつ、誰かとつながりたいと思うのか?」そんな問いが、頭をよぎりました。
人は結局、動物に変わりがない
『生殖記』が鋭く描いているのは、理性の皮を一枚剥いだ先にある“人間の動物性”です。
恋愛、性、欲、競争…それらがまるでドキュメンタリーのように淡々と記録されていき、読んでいて思わず苦笑いしてしまう場面もありました。
こうした描写を通して、「自分は本当に“理性的”に行動しているのか?」という疑問がわいてきます。
- SNSでの“いいね”
- 仕事で感じる競争心
それらも、もしかすると“承認”や“生存”をかけた動物的本能の延長なのかもしれません。
一見理性的に見える私たちの行動の裏に、どんな衝動が潜んでいるのか『生殖記』はその問いを突きつけてきます。
私たちは本当に「人間」なのか?それとも、社会に適応した「動物」にすぎないのか?と考えた結果、やっぱりどうしても動物に変わりないと思いました。異性と常に一緒にいる人はチャラいとか色々思われるかもしれませんが、それは動物である以上めちゃくちゃ自然な原理だなーと考えさせられました。
自分の行動を俯瞰して考えるきっかけになった
『生殖記』の最大の特徴は、「自分が自分を観察しているような」感覚に陥る構成です。
登場人物の行動が、あたかも記録映像のように描かれており、その無機質さがかえって生々しさを際立たせます。
例えば、ふと笑ったときや、涙をこぼした瞬間――その表情の意味を、私たちは普段考えることがあるでしょうか?
- なぜ今、自分は笑っているのか?
- なぜこの場面で、心がざわつくのか?
- なぜ貧乏ゆすりをしているのか
- なぜお風呂に入っているのか
- なぜ今このような記事を書いているのか
そんな些細な行動の一つひとつに理由を見出そうとするうちに、まるで“自分の人生を監視カメラのようなもので実況されながら見ている”ような感覚に包まれます。
この読書体験は、単に物語を読むというよりも、自分自身の行動や感情の奥にある「何か」を探る旅のようでした。
どんな人にこの本がおすすめ?
『生殖記』は、いわゆる起承転結のあるストーリーを期待する読者には、少し難解に感じるかもしれません。
しかし、物語というより「社会の記録」「人間観察」として読めば、この作品は非常に深く刺さります。
- 日常に違和感を感じている人
- 「なぜ自分はこんな風に生きているのか」と考えたことのある人
- 人間の“本質”に興味がある人
こうした問いを持っている方にとって、『生殖記』は心に強く残る一冊になるはずです。
朝井リョウさんと言えば『何者』や『桐島、部活やめるってよ』といった、社会の断面を鮮やかに切り取る作風で知られていますが、本作はその中でもとりわけ実験的で、ある意味“冷たい”小説です。
ですがその冷たさは、決して拒絶ではなく、「あなたはどう思う?」と投げかけてくる余白。だからこそ、自分の考えや感情としっかり向き合う時間が生まれました。
あなたにとって「人間らしさ」とは?
『生殖記』を読み終えて、私は自分の内面をこれまでになく静かに、深く見つめ直しました。
- 人間とはなにか。ほかの動物との違いは?
- 社会とはなにか
- 生きづらさとはなにか
- 自分はどんな風に、誰かとつながっているのか
- なぜ性的マイノリティが生まれてしまうのか
そんな問いを、この本は答えずにそっと差し出してくれます。
あなたにとっての「人間らしさ」とは何ですか?この作品を読んで、どんなことを感じたでしょうか?
ぜひ、「みたことがないタイプの小説」を読んでみたい人はぜひ生殖記をおすすめします!
まとめ
いかがでしたか?
今回は、朝井リョウさんの話題作『生殖記』を読了したので、その感想を深掘りしてお届けしました。
改めて一言で感想を述べるなら、「こんな小説、今まで読んだことがない。」というかんじでした。
物語らしい展開はなく、さまざまな人間たちの営みを淡々と描写していく「記録」のような文章。まるで、社会という生態系を顕微鏡で観察しているような感覚に陥ります。
改めて本記事では、以下の3つの視点からこの小説を考察をまとめました。
- 人間は誰かと寄り添いたくて寂しい生き物
- 人は結局、動物に変わりがない
- 自分の行動を俯瞰して考えるきっかけになった
当サイト(Nagi Rhythm)は現在1500記事以上投稿しており、過去に様々な読書レビューをご紹介しておりますのでご覧ください!