こんにちは。Nagiです。
当サイト(Nagi Rhythm)は現在2000記事以上更新しており、過去に『爆弾』や『愚か者の身分』など、人間の闇や心理を描いた作品を数多くレビューしてきました。
本日はタイトル通り、「愚か者の身分」同著である西尾潤さんの小説『マルチの子』(徳間文庫)を読み終えましたので、執筆させていただきます。
もし読者の方が今、NISAやS&P500で堅実に資産を増やそうとしているならそのままで大丈夫ですが、これから「SNSで見かけた一発逆転の利回りがエグい投資話」や「ラクして稼げる副業」を始めようとしている人は、絶対に読まないでください。
いや、むしろ逆で「虎の子の資産を溶かす前に、ワクチンとして必ず読んでください」と言うべきかもしれません。
読み終わった直後、過去WEB3系で経験したことがあったので「お前は俺かw」状態で共感しまくりというのが正直な感想です。
今回の記事では下記の3点についてピックアップをさせていただきました。
承認欲求と「居場所」の罠について
STEPNに熱狂していた僕が見た「祭りのあと」
タイ・チェンマイへの逃避行で気づいた「本当の幸せ」
それでは上から順に解説をしていきます。
赤い眼鏡と承認欲求の罠について

物語の主人公は、21歳の鹿水真瑠子(しかみず まるこ)。 優秀な姉と可愛い妹にコンプレックスを抱く彼女は、常に「誰かに認められたい」「何者かになりたい」という、いわゆる承認欲求モンスターでありました。
そんな彼女がふと足を踏み入れたのは、バイト先の友達から誘われた「磁力と健康セミナー」という怪しげな場所。 普通の人なら、「うわ、怪しい」とすぐに立ち去るはずです。
しかし、「とりあえず人生1発変えたい」と考えている彼女はとりあえずやってみた結果、本人も気づいていなかった「ある才能」がありました。
最年少でゴールドランクまで上り詰める快感
彼女には、嘘をついて人をその気にさせる「セールスの才能」がありました。
セミナーで教わった通りに商品を勧めてみたら、面白いように売れてしまい、気づけば彼女は「最年少ゴールドランク」に昇格し、月収は150万円を超えていました。
地味で何者でもなかった彼女は、「赤い眼鏡」をかけると自信満々な「できる女」に変身し、これまで浴びたことのない賞賛を浴びます。
ランク維持のための「自爆営業」
しかし、このランク制度こそが地獄の入り口でした。 ランクを維持するためには、毎月一定の売上ノルマを達成し続けなければなりません。
- 一度味わった「ゴールドランク」の座から落ちたくない
- 「ただの人」に戻りたくない
という焦りから、彼女は売上が足りない分を「自腹(借金)」で買い込み始めます。客観的に見れば「あほだなぁ・・・」と思ってしまいますが、あまりにのめり込んで普通にリボ払いやキャッシングもしまくります。
「来月売れば取り返せるから」 そう自分に言い聞かせながら、在庫の山と借金の山を同時に築いていく様が本当にリアルすぎます。
STEPNやNFTバブルに熱狂していた僕が見た実体験

この小説を読んでいて、何度も吐き気がしました。 作中で描かれる「熱狂のメカニズム」が、僕がかつてハマっていたSTEPNやWEB3界隈と、あまりにも酷似していたからです。
当サイトを長く読んでくださっている方はご存知かと思いますが、僕はかつて「歩くだけで稼げる(Move to Earn)」と話題になったSTEPNに熱狂し、記事も大量に書いていました。
正直に告白すると「全損」でした
当時の僕は、完全に「脳汁」が出ていました。
毎朝早起きして、お気に入りのデジタルスニーカーのレベルを上げ、ただ歩くだけでチャリンチャリンとお金(トークン)が入ってくる。
大体平均でいえば「日給5万円」くらいだったのですが、本気で「これが新時代の働き方だ」「自分は最先端にいる」と信じて疑いませんでした。
なんなら一生これが続くとすら思っていましたが、見事に大暴落して終わりました。
セミナー会場=Discord、勧誘=WAGMI
『マルチの子』では、セミナー会場で会員たちが互いを褒め称え、高揚感を共有するシーンがあります。 これ、僕が実際に経験したNFTバブル時代のDiscord(チャットツール)と全く同じでした。
実際にあまりにも僕自身がNFTにハマっていたとき、metasamuraiやAZITOなど、さまざまな記事を執筆していました。
毎日、「WAGMI(We All Gonna Make It / みんなで成功しよう)」という合言葉が飛び交い、NFTを買った人には「おめでとう!」と賞賛のスタンプが嵐のように送られる。
暴落して不安なことを言う人がいれば、「FUD(恐怖を煽る人)」とレッテルを貼って排除するといった感じでした。
作中の真瑠子が「仲間を裏切れない」と借金を重ねたように、僕も暴落が始まった時に逃げられませんでした。
- 「ガチホ(保有)こそ正義」
- 「運営を信じて買い増しだ」
とインフルエンサーのそんな言葉を真に受けて、損切りどころか、さらに資金を突っ込んでしまっていました。
今、僕のウォレットには、かつて数十万円、数百万の価値があったはずのスニーカーやNFT画像が残っていますが、完全にただの電子ゴミです。もう誰も話題にしない、価値のなくなった電子データです。
僕がやっていたのは「投資」ではなく、ただ承認欲求を満たすための「課金」だったわけです。
X(旧Twitter)を見ていると、今でも「このコインは上がる」「Web3の未来」と叫んでいるインフルエンサーがいます。
以前なら「すごい人たちだ」と思っていましたが、決して否定はしませんが彼らが「ランク維持に必死なマルチ会員」に見えて仕方ありません。
タイとベトナムへの逃避行で気づいた幸せと紐づく

先日僕はタイのチェンマイとベトナムのホーチミンへ一人旅に出ました。 そこで見た光景が、僕の価値観を根本から変えることになります。
現地のコンビニに入った時のことです。 店員さんがパーカーのフードを目深に被り、イヤホンで音楽を聴きながら、スマホゲーム片手にレジ打ちをしていました。 日本なら大クレーム案件ですが、現地ではそれが「普通」で、誰も怒っていませんでした。

その光景を見た時、僕は肩の力が抜けると同時に、ある意味ショックを受けました。 「ああ、人間ってこんなに適当でも生きていけるんだ」ということです。
デジタル上の「高級ブランド」なんていらない
チェンマイの街を歩けば、ボロボロのTシャツとサンダルで、楽しそうに笑っている人たちばかりでした。
以前、スペインやフランスに行った時もそうでしたが、誰も「ブランド物」なんて身につけていません。 リックオウエンスやクロムハーツを着て、他人の目を気にしているのは、日本人と韓国人だけでした。
それなのに、僕はどうだったでしょうか。 現実世界では質素に暮らしているつもりでも、デジタル空間では「レアなスニーカー」や「高価なNFTアイコン」を誇示し、マウントを取り合っていたのです。 その滑稽さに気づいた時、憑き物が落ちたような気がしました。
全身5,000円の服を着て、適当に働いて、美味しいご飯を食べるという、ある程度適当なぐらいのほうが、デジタル上の「神」になるより、ずっと幸せで豊かだったということです。
結局おいしい話なんてそんなにない

『First Love 初恋』のレビューでも書きましたが、結局のところ人生において大切なのは「刺激的な成功」ではなく、「何気ない日常の平穏」なのだと、この本を読んで改めて確信しました。
作中の真瑠子は、常に「何者か」になろうとして焦り、破滅していきます。 一方で、実際に経験したWEB3の爆損と旅を経た今の僕はこう思います。
毎日普通に眠れること
チャートや運営のアナウンスに怯えず仕事ができること
家族や友人と笑ってご飯が食べられること
日本の清潔なシャワーとウォシュレットがあること
これ以上の幸せはありません。 投資に関しても、この本の最終章に出てくるような「一発逆転」「利回りがえぐい仮想通貨」といったアルトコインや怪しいプロジェクトは全て「ゴミ」だと悟りました。
僕の周りで本当に勝っている人は、片手で数えるほどしかいませんし、結局ビットコイン以外ゴミです。
イーサリアムもソラナもゴミ。「それ本当?」と思ったら是非チャートを見てみてください。全てが死んでますし、投資は結果が全てです。
だからこそ、今の僕は「暗号資産を触るならビットコインだけを買って、あとは寝ておく」。 これに尽きます。
退屈かもしれませんが、その「退屈」こそが、真瑠子が手に入れられなかった本当の幸せなのかもしれないと思いました。
まとめ

いかがでしたでしょうか? 本日はタイトル通り、西尾潤さんの『マルチの子』を読み終えたので執筆させていただきました。
改めて結論からお伝えしますと、現代社会の闇をえぐるルポルタージュのような凄みを持った作品であり、投資や副業を考えている人にとっては最強のワクチンとなる一冊でした。
今回の記事では下記の3点についてピックアップをさせていただきました。
承認欲求と「居場所」の罠について
STEPNに熱狂していた僕が見た「祭りのあと」
タイ・チェンマイへの逃避行で気づいた「本当の幸せ」
もし、読者の方がマルチ商法だけでなく新しく仮想通貨を触ろうとしているなら絶対にビットコインだけにしてください。
そして、そのお金で美味しいご飯を食べて、ビットコインを少しだけ買って、あとは枕を高くして寝ましょう。 それが、数百万を溶かした僕が辿り着いた、唯一の真理です。
当メディアでは現在毎日更新をしており、過去に様々な書評や映画レビューに関する記事を執筆させていただいておりますので併せてご覧ください!












