巷で騒ぎになっているZOZOの創業者である前澤友作氏が発表した、100万円を1000人に配るという総額10億円の「お年玉」企画が話題ですよね。
100万円を12等分して当選者に毎月支給する形となるようで、前澤氏は、政府が最低限の生活に必要なお金を支給するという政策「ベーシックインカム」の実験だと公言しています。
発表時期からいって総額10億円のビッグな「お年玉」ですが、さらに前澤氏は、動画での説明の中でこの企画を「社会実験」だと説明しています。
現に前澤氏はツイッターで「僕が実験したいことは『ベーシックインカム、前澤個人でやってみた』です」とつぶやいています。
皆さん、想像してみてください!
『仮に、毎月8万3千円(年間約100万円)があなたに無条件で政府から支給されたら、あなたの暮らしや仕事はどうなりそうですか?』
ずばり #前澤お年玉 で僕が実験したいことは「ベーシックインカム、前澤個人でやってみた」です。(つづく)
確かにベーシックインカムと似た面はあり、「もし毎月8万3000円のベーシックインカムがあれば、どんな気分ですか?」と当選者に聞いてみたくなるところではありますね。
ベーシックインカムは、所得の多寡に関係なく一定額の現金相当物が支給されることに特徴があるので、高所得者にベーシックインカムが支払われた場合の効果も見てみたいところです。
【そもそもベーシックインカムとは?】
ベーシックインカムとは、政府が国民に基本的(Basic)な所得(Income)を保証する制度のことです。
就労状況・勤労の意志・資産の有無・年齢・性別・所得などに関係なく、無条件で一定の所得を保証します。一律所得保証・基礎所得保証とも呼ばれます。また、英字表現の頭文字をとりBIと表現されることも多いです。
【海外では既に導入されている国も】
フィンランドは、2017年1月から2年間の計画で試験的にベーシックインカム制度を運用していました。
失業中の2000人に毎月一律560ユーロ(約7万4300円)がベーシックインカムとして支払われました。国家レベルでは欧州初のこの取り組みは、世界中から強い関心を集めました。
カナダでの事例
ジョージタウン大学のWiderquist准教授は、カナダの事例について「現金の支給が健康面にプラスの影響を与えた」と指摘しています。
低出生体重児が減少した。乳幼児死亡率も低下した。子どもたちは学校教育をより長期間受けられるようになった。恵まれない家庭に生まれた子どもたちにとってこれほどの希望はない。
ほかにも、住宅の所有率が高まり、精神科救急の患者数も減ったそうです。
【日本の3割の世帯は、貯蓄額が0円】
家庭を持ったり、健康を害したりと、急な出費が必要になったとたんに、生活設計が破たんしてしまいます。
今までの時代は、会社に所属すると年齢が増えるにしたがって、自動的に給料が増えていきました。自分たちの両親の世代はそんな感じでしたね。
そのおかげで年を経るだけで、収入が増えて、生活を安定させることが出来ました。
年齢が増えても給与は増えない人が大多数
しかも非正規雇用の人は勤続期間が増えても給料が上がらないことがほとんどです。
2017年は非正規雇用の労働者が2000万人を超え、更には非正規雇用の割合は10年以上ずっと増加しています。
子供一人を育て上げるのに約3,000万円かかる
日本の若者は自分の生活を支えるのに精一杯で、子供や家庭を支える収入や貯金は無いので、晩婚化、少子化が進んでいきます。
晩婚化、少子化が進むと、商品を買う人も、技術者や経営者や学者の人数もますます減っていく一方です。なるようにしかならないのですが、日本の将来を考えると恐ろしいですよね。
出産・育児には長期的に多額のコスト
母親が仕事復帰できない、父親の収入が上がらない子育て世帯は、金銭的に大きな不安を抱えています。
【ベーシックインカムを導入する5つのメリット】
ベーシックインカム制度の最大のメリットは、最低限の所得保障が誰でも受け取れることでしょう。
最低限の所得があれば、ライスワークとして行っている仕事の量を減らし、本来やりたかったことにチャレンジしようという気持ちになることもできます。
自分がやりたかった仕事ができる
ベーシックインカムが得られることで、所得が得られるかどうかに関係なく、自分が本当にやりたかった仕事や活動に力を注げることがメリットのひとつに挙げられます。
多くの人は人生における大半の時間を「生活をするための労働」に割いています。
ベーシックインカム制度を導入することで「生活をするための労働」に従来ほど時間を費やす必要はなくなると考えられます。
挑戦がしやすくなる環境
例えば、ビジネスに失敗して生活苦に陥るのを恐れて起業を諦めていた人もいるでしょう。
ベーシックインカムが導入されれば、安定した収入を確保できます。なので、起業家を目指している人やアーティストを目指している人が挑戦がしやすくなると言えます。
少子化・晩婚化の減少を避けることができる
ベーシックインカムがあれば、出産や育児中も一定額の収入があります。
子供を産んで育てる間も収入があれば心の余裕にも繋がることでしょう。その上、ベーシックインカムは「年齢」の制限がありませんので、子供を産めば産むほど収入が増えます。もちろん支給金額にもよるでしょうが、子供を出産することを従来ほどリスクとして考える女性は減るのではないでしょうか。
毎月7万円あれば変わる今後
夫婦と子ども1人で21万円の月収があるので、子どもを持つ若い夫婦の一方が、会社勤めをするのではなく、「役者を目指したい!」といった夢に賭ける人生を送ることができるかもしれない。
経済的効果がどうなるか今後見物ですね。
上記のことからベーシックインカムの導入は少子化解決の重要な糸口だと思えますね。
【行政コストの大幅削減になる】
生活保護には、市区町村役場での相談窓口を設置する、審査制度を設けるといったコストがかかりますが、ベーシックインカムは無条件で支給されるため、審査も相談窓口も不要になります。
その分、行政コストダウンにつながることが考えられます。
【生活保護も行き届かない貧困層を救えるかも】
社会保障に詳しい研究者の調査によると、日本には生活保護レベル以下の生活をしながら、生活保護を受給できずにいる「隠れた貧困層」が全国で2000万人以上いると推測されています。
そのため、ベーシックインカムを導入することで、そのような最貧困層にいる人たちを救う手立てにもなるのではないかと言われています。
【ブラック企業がなくなるかも】
ブラック企業が存在する理由の一つとして、「社員が会社をやめられない」ことが考えられます。
低賃金で長時間労働、おまけにパワハラが横行している劣悪労働環境。
そんな環境でも体にムチを打ってまで働く社員は、退職後の生活に不安があるのでブラック企業を辞められません。
退職後収入がなくなるためブラック企業であってもなかなか退職ができないですが、ベーシックインカムを導入することによって一定額の収入がありますでのブラック企業で働く必要がなくなります。
条件に見合っていないひどい企業であれば、スパッと辞めてしまえばいいのです。
【ベーシックインカムを導入する2つのデメリット】
誰でも受け取ることのできるベーシックインカムならではの問題点もあります。ひとつは日本人のモラルハザードの問題、もうひとつは財源の問題があげられます。
ベーシックインカムがあることで働かなくなる?
ベーシックインカムの導入にあたって懸念されることが、「ベーシックインカムが導入されたら働かなくなる人が増えるのでは」ということです。何もしなくても最低限度の生活ができるのであれば、働きたくない人は増えるかもしれません。
サービス業で考えてみると、土日に働きたい人がいなければ、土日営業ができなくなります。
もし国民の労働意欲が大きく低下するような事態になれば、国際社会での日本の競争力は低下することになるでしょう。とはいえ、ベーシックインカムはあくまで最低限度の給付でしかないのでベーシックインカムだけで生活していくことは難しいため、労働時間は多少減っても働く人の減少にはつながらないのではないかと考えられています。
【財源の問題】
ベーシックインカムの導入には、ある程度の財源の確保が必要です。
20歳以上に限定して月7万円を支給しようとしても、2017年7月時点の日本の成人人口はおよそ日本の全国民(約1億2700万人)を賄うには、1か月あたり8兆4000億円が必要です。年間にすると100兆8,000億円にもなります。
そのため、ベーシックインカムの導入には増税が避けられないでしょう。消費税20%も簡単にいきそうですよね。
【前澤友作氏の施策はベーシックインカムか?】
今回の場合、ベーシックインカムは将来も継続的に存在することが期待される所得であることに対して、今回の実験が「1年限りの収入増」となるため、ベーシックインカムとはまた違った感じになるのかなと思います。
【AIで失業する人をベーシックインカムが救うかも】
AIの絶大なる進化によって、大失業時代が来ると言われています。AIによる仕事の自動化によって消滅する仕事は、10年後には現在の仕事全体の約2割。20年後には約5割にもなると言われています。
近い将来、AIに仕事を奪われた失業者たちが街に溢れるかもしれません。
これは日本だけではなく、世界共通の課題となっています。AIが出来ないことを提供できる人間でなければ、仕事は得られません。大失業時代のセーフティネットとしても、ベーシックインカムの導入が注目されています。
【もし日本に導入された場合どうなるか】
結論、財源の面から、年金や生活保護といった社会保障制度の廃止が予想されます。
総国家予算約100兆円に対してベーシックインカムに必要な予算は100兆円規模と想定されます。
現行の社会保障制度とベーシックインカム両方を同時に運用することは現実的ではないですね。
前澤友作氏の今回の施策で思ったこと
まず100万円を1000人に配るということ自体が連絡つかない人も多数いそうで大変だろうなあと見てしまいました。
もちろん、ランダムに選ばれた当選者の中には、実験対象として興味深いサンプルが混じるに違いはないですが、仮にベーシックインカムを意識した社会実験を行うのであれば、対象者の選定を含めてリサーチを行った上で実施しないと少々もったいないように思いました。