こんにちは。Nagiです。
当サイト(Nagi Rhythm)は現在毎日1000日以上更新をしており、過去に様々な映画やドラマのレビュー記事をご紹介させていただきました。
昨日アカデミー賞を受賞した「パラサイト 半地下の家族」を観てきました。
英語以外の言語の映画が作品賞を受賞するのは史上初という快挙だそう。
アカデミー賞受賞後ということでレイトショーに関わらず満員でした。こんな映画館をみるのはミュウツーの逆襲以来でした。
結論
いきなり結論ですが、今まで映画を1000本近く鑑賞した中でTOP3に入るといってもいいと思う内容でした。
理由は下記3点になります。
- 起承転結を3回くらいやる
- 登場人物が少なめなのでシンプルで分かりやすい
- 「匂い」に着目した独特の表現
前半は笑えるシーンが多かったので、終盤にかけてのスリリングな展開には驚きました。
それではどういうところがよかったかご説明する前にあらすじをご紹介します。
あらすじ
全員失業中で、その日暮らしの生活を送る貧しいキム一家。長男ギウは、ひょんなことからIT企業のCEOである超裕福なパク氏の家へ、家庭教師の面接を受けに行くことになる。そして、兄に続き、妹のギジョンも豪邸に足を踏み入れるが…この相反する2つの家族の出会いは、誰も観たことのない想像を超える悲喜劇へと猛烈に加速していく――。
私見と感想
良かったところ
ラストまでひとつも目が離せない展開はまるでジェットコースター。眠気ゼロ!
- 登場人物が覚えられない自分でも覚えやすかった
- 映画ポスターのデザイン
- 匂い
- 桃のシーン
- 濁流の中喫煙
- モールス信号
- ダソンの絵
- 階級の差
- パク社長が前の家政婦のことを「2人分食べる」というセリフ
- 韓国の正座で手を両手で挙げ続ける風習
日本だったら漫画などに出てくるお仕置きのイメージは、「バケツを持って廊下に立たされる」とだったりするのですが、韓国ではそれが「正座で両手を挙げつづける」ことだそう。
カテゴライズ不能な映画
悲劇で喜劇でホラーでサイコでヒューマンドラマで…レンタルビデオ店だったらどのラックに置くか悩みそう。と、思った矢先「アカデミー賞作品賞受賞のお知らせ!」と発表されたので置く場所は決まった。って感じですね。
格差の表現について
階段、雨、顔パーツ。そして臭い。格差の対比表現がすごい。
「上には上がいる」はよく使われる言葉だけど、反対に「下には下」がいて、そして常に下の言葉は上へ届かない。
格差をあらわすメタファーが散りばめられているので、観てて飽きなかったです。
映画の中で1番印象深かった「匂い」
この映画で「匂い」がとても重要なモチーフとなっています。観終わって自分の臭いを確認した人多そう。
親しい仲でもなかなか話題にすることができない内密で私的な部分であり、礼儀や尊厳にも関わるセンシティブなものです。
自分の匂いって1番近しいもののため、なかなか分からない
「キライ」より「くさい」のほうが傷つくとはよく言ったものです。
着飾って、所作を美しくみせても身体から溢れでる匂いはずっと半地下で暮らしていた時まま。
監督がこの映画の匂いについてこう語っています。
この映画では、互いの“臭い”を近距離で嗅ぐことができる状態になっています。パク社長のセリフに“度を越す”というものがあります。彼には『ここから先は入ってくれるな』という“ライン”がある。パク社長にとって、貧しい世界は『見たくないもの』『自分には関係のないもの』なんです。本作では(“ライン”を越えて)“臭い”が入ってきたことによって、悲劇がもたらされるんです。
会社に行く時も友達と会う時以上に気をつけよう(笑)
手に汗を握った4つのシーン
- キャンプが大雨で中止になり、急遽夫妻が8分後に自宅に帰ってくるシーン
- パク夫妻がソファで爆睡してから机の下に隠れている主人公が逃げ出そうとするシーン
- 家政婦、ドライバー、ジェシカの匂いが同じだとダソンが言ったシーン
- 地下に石を落としてしまったシーン
もう目が離せなくて見ているこっちがハラハラドキドキして手に汗を握りました。
2のシーンでは主人公が後少しで逃げれる!ってときに1番下の子が急に無線で「緊急事態!」と無線機器でお父さんに報告するシーンは一瞬「あ・・・終わった・・・」と思いましたね(笑)
階級・貧富の差
この映画では顕著に「貧富の差」が表現されています。むしろ表現されすぎなくらい。
- 金持ちで資産家のパク社長の家は高台
- ギテク一家は高台よりも下の街、そのまた半地下
しかもトイレよりも下の位置に住んでいるのは衝撃。
パク社長の家に行くには多くの階段を上がっていかなければ到達できません。
ポン・ジュノ監督の雨や水を使った表現
あの大雨の夜、強く降る雨によって激しく流れていく濁流で水没していく家。
そうしたカオスな情景が精神状態をもカオスにして、特にギテクの感情が吹き出したように見えます。
足元の激しい濁流を見つめるギウはやるせなさでしょうか。
雨は階級・貧富の差も顕著にした
ギテクの家は大雨で水没し、体育館へ避難を余儀なくされた生活に対し、パク社長の末っ子ダソンのおもちゃのテントは大雨にも耐え、濡れることなく朝までいることができていました。
もはやダソンの小さいテントのほうが優秀。あれ家じゃないよな・・・。
階層の差を表す1つの表現
パク社長は階段を上るシーンしかありません。というかこの映画は貧富の差を表すためか、「垂直のシーン」がかなり多いです。
大雨の日に命からがら逃げてきたギテク、ギウ、ギジョンは下へ下へと長い階段を下りていきます。それはまるで地の底へ行くような絵でした。
しかも上から下へと濁流が流れていき、高低差を強く感じるシーンがありました。
ダソンの絵
この絵はチンパンジーでもダソンの自画像でもなく、あの幽霊、地下に住んでいる・・・あいつだ・・・!
- ギョロっとした目
- 皮膚の色
- 意味深な背景
背景には太陽があって、下から上に上がってくる矢印までも・・・!
韓国では家族写真を飾っている家も多いそうですが、同じ家に住む人のように家族写真と一緒に並べられているのも、今思うとぞっとしますね。
人間の性欲について
愛撫シーンの中で、クビにしたユン運転手の”パンティ”はないかとか、”ドラッグ”が欲しいとか、上品なパク社長夫婦も軽蔑していたユン運転手と所詮同じだということがわかりました。
結局みんな同じじゃねえか!
お金持ちで上階級の人間も性行為時にはドラッグを使ったりとみんな同じ性欲がある人間で、どんなところに住んでいようとも人間の営みがされているのを見せてくれます。
モールス信号
地下室で喘いでいる男が必死にSOSを伝える手段として使われますが、結果として誰にも届きませんでした。
唯一気づいたのがダソン
庭のテントで解読しようとしていましたが、ちゃんと解読できたのかどうか…
下層の人たちの必死なヘルプの叫びは誰にも届いていない。
どんなに近くにいても地下に住んでいるような人たちの切実な声、ヘルプに気づかない今の社会問題が表現されているように思いました。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
冒頭にも述べた結論ですが、今まで映画を1000本近く鑑賞した中でTOP3に入るといってもいいと思う内容でした。
理由は下記3点になります。
- 起承転結を3回くらいやる
- 登場人物が少なめなのでシンプルで分かりやすい
- 「匂い」に着目した独特の表現
この映画は簡単に言ってしまえば「貧しい家族が裕福な家族へ寄生していく」話ですが、ポン・ジュノ監督はインタビューでこうも話しています。
『この映画では、お金持ちも“寄生虫”なんだ』ということ。つまり、お金持ちというのは、貧しい人々に“寄生”して労働力を吸い上げている。(自分たちでは)運転もできないし、ハウスキーピングもできないわけです。お金持ちは、貧しい人たちの労働に“寄生”している――そういう意味合いもある
そのほかではパク社長の家の光もギテクの家の差し込む光も全て自然光で、時間を待って撮影したそう。
全てに意味があるストーリー
映画は131分で終わりますが、監督・製作関係者が何年も構想を練ってつくりあげているものなので、適当に作られたものは何一つなかったです。
- 一つ一つのセリフ
- 行動
- セット
- 小物
かなり手が凝った作品でした。本当に見て良かったです。