こんにちは。Nagiです。

2026年も3ヶ月が過ぎようとしていますが、現時点での暫定ベストであるヨルゴス・ランティモス監督の最新作「ブゴニア」をご紹介します。

これまでの人生で1000本以上映画を見てきた筆者ですが、世界で1番好きな映画である「哀れなるものたち」のエマ・ストーンとランティモスが再び組み、そこに製作として「ミッドサマー」のアリ・アスターがタッグを組む時点で「むしろ面白くならないわけがない」と確信していました。

もちろん結果はその期待を軽々と超えてきました。現時点で今年1位。

観終わったあと、すぐに「ここが良かった」と整理できるタイプの映画ではなく、むしろ帰り道にじわじわ効いてくる感じで、妙に言語化しづらいのに、誰かと話したくなるような作品でした。

それではレビューしていきます。

映画「ブゴニア」作品概要とあらすじ

なんと2003年に公開されたチャン・ジュナン監督による韓国のカルト的傑作『地球を守れ!』をベースにしたハリウッド・リメイク作品らしい。

全然「地球を守れ!」という作品を知らなかったのですが、知っている人からすればめちゃくちゃ面白いかもしれません。

監督やらキャストなど制作陣は以下の通り。

項目詳細
監督ヨルゴス・ランティモス
製作アリ・アスター、エマ・ストーン、ウィル・トレイシー
キャストエマ・ストーン、ジェシー・プレモンス、エイダン・デルビス
ジャンルブラックコメディ、SF、サスペンス

そもそも「哀れなるものたち」も「フランケンシュタイン」のリメイク感があるようなものですし、もっと事前に勉強すべきでした。

ちなみに自分は「哀れなるものたち」→「フランケンシュタイン」にいったので逆を辿ればよかった・・・!

ネタバレなしの簡単なあらすじ

あらすじを一言でお伝えすると「大手企業の社長を誘拐して監禁する作品」です。

主人公は巨大製薬会社「オークソリス」の若き女性CEO、ミシェル(エマ・ストーン)。

彼女はある日突然、自社の倉庫で働く養蜂家のテディ(ジェシー・プレモンス)と、その従弟のドン(エイダン・デルビス)に誘拐されます。↓こんな感じ。

笑ってしまうような話なのですが、誘拐した理由もとても意味不明で、テディがミシェルが地球侵略を企む「アンドロメダ星人」であると確信しており、4日後の月食までに宇宙人の皇帝に会わせるよう彼女を追い詰めていきます。

なんとか逃げようとしますが見事に捕まってしまい、地下室に監禁されたミシェルは、持ち前の知性と話術を駆使して脱出を試みますが、テディの狂気は次第に加速していき……。

ちなみにCGでもなんでもなくガチで髪を剃ってます。その時点で相当ヤバい映画であることが分かります。

一番おもしろかったのは「対話不能」の怖さ

本作の大半がテディの自宅である「地下室」という極限状態で行われるミシェルとテディのやり取りです。

ミシェルは、企業のトップらしく言葉の扱いがうまいく、相手の心理を読み、懐柔し、主導権を奪い返そうとする。その話し方には、現実の社会で通用する説得力があります。さすがCEOだなぁ~としみじみ。

テディの弟である心優しいドンは、お人好しすぎて騙しまくることができますがテディにはそれが通じない。
大手企業の社長だから「お金があるだろう」とか「大手企業の社長だから1回抱いてみたい!」といった性欲も皆無。

立場や合理性も彼の中では決定打になりませんでした。

彼を動かしているのは、もっと別のもので「確信、妄執、憎悪」に近い何かだけが原動力。もはや人間が本当にむかついて復習したいとなったらお金じゃなくなるんだと考えさせられます。

この地下室の対話がなんか既視感があると思ったら映画「爆弾」の刑務所内とほぼ同じでした。

自分たちは普段、最終的には話せば分かるとか、利害を整理すれば落としどころがあるとか、どこかで信じて生きていますがブゴニアの場合はその前提をかなり乱暴に崩してきます。

観ていてずっと不快で、その不快さが本作の魅力そのものでもあります。

インテリアや部屋の空間の見せ方による差異がほぼ映画「パラサイト」

もうひとつ強く残ったのが、空間の見せ方です。

ミシェルの側にあるものは、全体としてとても美しい王道のインテリアやミニマルなデザインのものばかりでとても綺麗に整っています。

一方で、テディの側にある空間は、もっと湿っていて雑然としていて触れたくない感じがあり、この落差がかなり効いていました。

映画で例えるなら「パラサイト」のような感じ。貧富の差がえぐいといえば分かりやすいかもしれません。

自分は劇中のインテリア、とくにバルセロナチェアのような要素に目が行きました。

バルセロナチェアとは

近代建築の三大巨匠の一人、ミース・ファン・デル・ローエがデザインした椅子。ミニマリズムと機能美の象徴。

以前私物で使っていた時期があるので余計に反応してしまったのですが、あの完成された造形が画面にあるだけで、空間の意味が少し変わって見えます。

など、そういうものを一脚で背負える家具です。

たかが家具だろうと、テディの家はボロボロでゴミ屋敷に近く、「ブゴニア」はそこを、説明ではなく対比で見せてくるのがうまかったです。

タイトルから感じたのは救いよりも冷たさ

タイトルの「ブゴニア」も、観終わってからじわじわ引っかかりました。特にラストシーンは結局「ミシェルが宇宙人だった」ということでスイッチ?ではないのですが指1本で人類みんなが死にます。

観ているあいだ何度も思ったのは、結局人類とは何なのか、ということです。
人は生きて、欲望を持ち、傷つけ合い、愛したり支配したりしながら、何か大きな意味があるような顔で毎日を進めていく。

でも、もっと大きなスケールで見れば、その営みは驚くほど小さいのかもしれません。

自分の中で浮かんだのは、どんな悩みだろうと地球規模で考えると「細胞の1ミリにも満たない」という感覚でした。それくらい人間の悩みや執着が矮小に見える瞬間がラストシーンに感じさせられました。

ジェシー・プレモンスの不穏さがずっと効いている

特にジェシー・プレモンスは、本作の役作りを経てさらに好きになりました。どこかのネジが外れた人間を演じさせたら、今のハリウッドで彼の右に出る者はいないでしょう。

エマ・ストーンももちろん強いのですが、本作では“華”よりも“異物感”が先に立っていた印象があります。画面の中心にいても、安心感を与えない。その不安定さが作品とよく合っていました。

「宇宙人なわけないやんw」と最後の最後まで思っていたので完全に自分も騙されました。良い意味で裏切られるのは本当に私好みの映画だったと思います。

結論:たぶん好き嫌いは分かれる。でも忘れにくい

監督はインタビューで「鑑賞後に食事にでも行って、語り合えるような作品にしたかった」と語っていますが、まさにそれにぴったりの映画だと思いました。かなり解釈が分かれそうなところが素晴らしすぎました。

会話の噛み合わなさが生む恐怖洗練と狂気の落差人類を少し遠くから眺めるような冷たい視線。そのどれかに引っかかる人には、かなり深く刺さるはずです。

自分にとっては、かなり高い確率で2026年暫定ベストだと思いました。

自分は陰謀論にハマったことはありませんが、もし何かの拍子に足を踏み入れたら、テディのように沼ってしまうかもしれない。そんな自覚すら芽生える、近年稀にみる素晴らしい一本でした。

ラストシーンの光景は、首が飛んだりグロテスクであるはずなのに、不思議なほど静謐で、滑稽なまでに美しいハッピーエンドに見えます。

不謹慎にも笑ってしまうような、あの究極のブラックジョークをNetflixではなくぜひ劇場で体感してほしいと思います。

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