こんにちは。Nagiです。

ここ最近「旅」をテーマにした本を片っ端から読んでいる中で、Amazonでたまたま見つけた「ときどき旅に出るカフェ」と続編「それでも旅に出るカフェ」の2作を読み終わったのでレビューします。

まず感想を一言でお伝えすると「最初から最後まで驚くほどするすると読め、タイトル通り行きつけのカフェで読みたくなる本」でした。

スタバのようなチェーン店ではなく、「個人経営の少し空気のやわらかい店で読みたくなる本」といえば伝わりやすいかもしれません。

読み進めるほど人と人の心地よい距離感と、「こんな行きつけの店があったら人生は少し変わるのかもしれない」と思わせる居場所の描き方が素敵でした。早速レビューしていきます。

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超簡単なあらすじ

氷野照明という会社に勤める主人公の「奈良瑛子」が近所で見つけたのは、「カフェ・ルーズ」という小さな喫茶店。

そこを一人で切り盛りしているのは、かつての同僚・「葛井円(くずいまどか)」で、海外の珍しいメニューを提供するお店「カフェ・ルーズ」。

旅を感じられる素敵な空間をすっかり気に入った主人公の瑛子は足しげくカフェ・ルーズに通うようになるお話です。

会社で起こる小さな事件、日々の生活の中でもやもやすること、そして店主の円の秘密など、不思議なことに世界の食べ物たちが解決のカギとなっていきます。

続編では「葛井円」が営むカフェ・ルーズもコロナ禍の影響を受けていてよぎなく営業しづらくなってしまうといった、現実世界でも実際に起きた話も組み込まれています。

スラスラ読めるのに、描写が頭の隅に残る

この本を読んでまず感じたのは、「本が苦手な人でもとにかく読みやすい」ということでした。

これら全ての情景が想像で勝手に膨らみあがります。

読みやすい小説は世の中にたくさんありますが、この作品の読みやすさは「平易だから読みやすい」というだけではなく、生活の中に無理なく入ってくる読みやすさがポイント。

旅系の本とはいえ、フィクションなので旅体験記ではなく「物語として楽しみたい」という人にはかなり相性がいいと思います。

世界の食を通して、旅を疑似体験できるのが楽しい

「旅に出るカフェ」シリーズのの大きな魅力は、やはり「旅」と「食」の組み合わせです。

今まで筆者は1mmもカフェに興味がなく、いわゆる「飯」しか興味がなかったのですが、この本を通していつの間にか国内・海外問わず様々なカフェに行ってみたくなりました。

店主の円(まどか)が旅先で出会った料理やお菓子、飲み物を店で再現して出してくれるという設定がとても良く、「ただ異国っぽいメニューが並ぶおしゃれなカフェ」というだけではなく、旅の記憶を食という形で持ち帰り、誰かに手渡している感じがなんともいえない尊さがあります。

私はもともと、旅は行って終わりではもったいないと思うタイプですし、円の気持ちもわかります。

どこかへ行ったなら、文章でもSNSでも、人に話すでもいいから何かしらアウトプットして伝えたいし円が食を通して旅をアウトプットしている姿はかなり魅力的に映りました。

この本を読んで、旅は景色を見るだけではなく、もっと食を楽しんでいいんだなとも思いました。

「ただ旅をしてどこへ行ったか」だけではなく、そこで何を食べ、何を持ち帰りどう自分の中に残したか目を向けたくなりました。

主人公「瑛子」と店主「円」の近すぎない距離感がとてもいい

この作品でいちばん印象に残ったのは、瑛子と円の距離感でした。

元同僚で、今は客と店主という関係は、毎日のように顔を合わせてもずっと敬語のままです。

踏み込みすぎず、でもよそよそしいわけでもない。近づきすぎないのに、ちゃんと信頼があるこの関係性が本当に心地よかったです。

最近知り合った人には全員敬語で話す筆者

もしこれが、もっとくだけた会話で、親友のように何でも言い合う関係だったら、作品の魅力はかなり下がっていたと思います。

少し言い方は悪いかもしれませんが、下手をすると関係性が雑になったり、空気がやや下品になっていたかもしれません。この作品は、そうならないギリギリの距離感をとても丁寧に保っています。

なぜこの距離感がこんなに心地いいのか考えてみる

筆者自身もたとえ親友や家族であっても、あまりプライベートに入り込まれすぎるのがつらい部分があるからだと思いました。

近ければ近いほどいいわけではないし、人間関係には、近さとは別の価値があります。この作品はそのことを自然に描いていました。

瑛子と円の関係を一言で表すなら、友情というよりも「信頼」「居場所」「他者理解」に近い気がします。

仲がいいから成立している関係ではなく、お互いを尊重しているから続いていく関係で、その静かな感じがとても好きでした。

「行きつけの店」がない人ほど、この物語は刺さる

筆者の経験から本当にカフェ・ルーズのようなお店が羨ましい

一人暮らしを始めて丸10年を超えましたが、いまだに行きつけのカフェはありません。まじで欲しい。

「行きつけの服屋」なら昔はありましたが、そもそもカフェと単価が一切違うしカフェのような気軽に入れるものはありません。理由はたぶん単純で、一人で入るまでの心理的ハードルが高いからです。

筆者の場合、まず扉を開けるまでが重いし人見知りなので、それだけでかなり消耗します。

本当はバーでもなんでもいいから、一人でふらっと入れる場所がほしいから5年前くらいに探しまくっていましたが、そこでコロナ禍に突入。終わった。

だからこそカフェ・ルーズのようなお店が近くにあったら通いたい、と本気で思ってしまいました。

いわゆるスタバのような“おしゃれなカフェに憧れる”という話ではありません。もっと切実に、第2の家のような場所がほしいという感覚に近いです。

筆者にとって行きつけの店の条件はこのあたりですが、カフェ・ルーズにはそれがそろっているように見えました。こういう場所が一つあるだけで、人生の質はかなり変わるのではないかと思います。

周りが結婚している中、自分だけ一人暮らし30代独身で仕事をして、家に帰って、また次の日が来る。

その繰り返しの中で、仕事でも家でもない居場所がほしくなる瞬間はたしかにあります。本作はその願望を確実に刺激してきました。

円のサービス精神と仕事の姿勢が魅力的だった

円の魅力は、旅をしていることや料理ができることだけではありません。店主としての姿勢がとてもいい。

とくに、「サービスしますよ^^」のような自然なサービス精神にはかなり惹かれました。わざとらしくないし、押しつけでもないのに相手を喜ばせたいという気持ちがちゃんと伝わりました。

それは単なる優しさではなく、仕事としての誠実さでもあると思います。

自分の仕事観と重なるものを感じる

そういう積み重ねの先に信頼が生まれて「円(まどか)」という人物にはよく表れていた気がします。

旅先で得たものを、自分だけの思い出で終わらせず、店を通して還元していくその姿勢も含めて、円はかなり魅力的な店主でした。

こういう人が店をやっているなら、常連になりたくなるのも自然だと思います。

コロナ禍の飲食店の描写にもリアリティーがある

このシリーズは、旅や食の楽しさだけでなく、現実の厳しさもきちんと描いているところがよかったです。

とくにコロナ禍で店を閉めなければならない描写や、通販をやったりキッチンカーへと動いていく流れにはかなりリアリティーがありました。

当時の飲食店含む接客業の大変さのことを思い出すと、正直かなり胸が詰まります。IT側の自分からしたらバブリーすぎて申し訳なさのような感情もありました。

円のように新しい手段へ動けるのは、本当にすごいし、強いし尊敬します。筆者だったら、先の見えなさによる経営不安に耐えられず、たぶんかなりしんどくなっていたと思います。

実際、美容師の担当者が「美容院も贅沢品みたいなものだから、店を閉めなければいけないと考えていた」と話していたことがあり、その切実さを思い出しました。

この作品はやさしい空気を持ちながら、そういう時代の重さもきちんと逃げずに受け止めています。そのバランスも印象的でした。

まとめ|旅と人間関係の“ちょうどよさ”が心に残る小説

『旅に出るカフェ』は、世界の食を通して旅気分を味わえる小説です。でも、それだけではありません。

この本のよさは、読みやすさの中にちゃんと余韻があることだと思います。

瑛子と円の近すぎない距離感や、仕事でも家でもない「第2の居場所」に対する憧れを静かに刺激してくることにあります。一時期「いきつけのバーがほしい!」とおもっていた時があったのですが諦めてしまったのでいつかそんなバーと巡り会えたらいいなと思います。

私にとってこの作品は、旅をしたくなる本であると同時に、こういう店が近所にあったら人生はもう少し豊かになるのかもしれないと思わせる本でした。

旅好きな人にはもちろんおすすめですが、それ以上に、毎日の生活の中で少しだけ息が詰まることがある人、自分の居場所をもう一つほしいと感じている人にこそ、読んでみてほしい一冊です。

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