こんにちは。
当メディアでは下記のように過去に様々な小説をご紹介させていただきました。
掲題通りなのですが、今回初めて島本理生さん著「ファーストラヴ」を読み終えたのですが・・・過去に読んだ小説の中で1番面白かったかもしれません。
まず感想を一言でいえば、物語にも文章の端々にも隅から隅まで、“女性”を強く感じました。
「いい歳してるのに何もわかってないんだね」と言われそうですが男の何気ない言動や無縁慮な視線が、女性を深く傷つけていたこと反省させられました。
それ同時に気づけば島本理生さんの大ファンになっている自分がいます。
理由は主に下記3点。
- 各登場人物の心理表現が上手い
- まるでジェットコースター並のストーリー展開
- 原作ならではのドロドロ感
今まで東野圭吾さんの「白夜行」が各小説の中で1番好きだったのですが、見事に順位が覆された気がします。
それでは上から順に解説をしていきます。
各登場人物の心理表現が上手い
たとえばですが下記の通り。
廊下の手すりの向こうに仄暗い空が見えて、すぐに遮られた。
意識を取り戻したとき、私は大きな声で泣いていた。生まれたての赤ん坊のように。
ようやく抱えこんでいた闇に光が当たった。清らかな解放感だけが胸を浸していた。人はもう一度生まれ変わることができる。環奈もきっと。
島本理央さんならではの比喩表現や「少女が静かに傷を負うシーン」が絶妙で、その場面と同時に「感覚がぼやけていく描写」も絶妙。作者の素晴らしさを感じました。
直木賞受賞作も確かに頷ける理由が分かりました。
まるでジェットコースター並のストーリー展開
物語前半から中盤にかけてはなんだか登場人物多くて大変だな〜と思って読んでいたものの・・・中盤から後半にかけて展開がとんでもなくてしがみつくのに必死でした。
個人的に好きな展開は下記2点。
- 迦葉と由紀の大学時代の関係について
- 環奈の初公判からラストまで
迦葉と由紀の大学時代の関係について
“男女に果たして友情はあるのだろうか”といつの時代になっても問われる内容だと思います。
迦葉と由紀のように過去に仲が良すぎた結果、男女の関係になろうとしたものの身体が正直に拒んでおり気まずい空気になった人ももしかしたらいるのかもしれません。
それらの心理的状況を追っているため、なんだかすごく重くて苦しい展開が待っていました。
大人になった二人は様々な障害を乗り越え、今では共に仕事をする関係というのがすごく尊くて奇跡のようなものを感じました。
環奈の初公判からラストまで
“化けの皮が剝がれる”というのはまさにこのことだろうと思った瞬間でした。
今ではメンヘラという言葉ですぐ片付けられますが、過去に親から虐待されていた人や友達から虐められていた人など様々な経験をしてきた人が多いと思います。
子供を見れば親がわかるというように、メンタル面まで遺伝するのだろうと思いました。
原作ならではのドロドロ感
当事者も気づかない過去の性的虐待。
女性はここではこうするべきっていうジェンダーが性的虐待を見えなくさせていたと思います。
自分の過去にも気づいていないだけのものがあったのではないかと思わず振り返りました。
恋愛を超えた迦葉との関係性、それらも含めて受け止める我聞の懐の広さに感動です。
子育ての難しさと愛情について考えさせられる
愛情を注がずに育てることのグロテスクさをじわじわと感じさせられました。
ネグレクトや暴力とは違う形の愛情の欠落。娘が手首を切っているのに、鶏に襲われて怪我したときのものだと言い切る母親。
まとめ
「ファーストラヴ」というタイトルから想像できない内容でした。
細かい躾とか教育ではなく、無条件の無償の愛情。言葉では言い表せない本能的な情愛。
親が傷ついたままだったり愛を与えられない状態だと次世代へ悲劇が連鎖する。でも親は選べないもどかしさについて考えされましたね。
もう島本理生さんの虜になってしまったため、先日映画をご紹介させていただいた「Red」の原作をこれから購入してきます(笑)
本作も8月にBD/DVDを発売とのことなので、楽しみで仕方ないですね!