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【レビュー】映画「リライト」レビュー【過去も未来も自分で書き換える】

ミニマリスト
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こんにちは、Nagiです。

当サイト(Nagi Rhythm)は現在1500記事以上投稿をしており、過去に様々な映画やドラマのレビュー記事をご紹介させていただきました。

画は年間100本くらい観ているんですが、これまで笑って泣ける青春映画や、心を揺さぶられるタイムリープ作品にもたくさん出会ってきました。

でも今回紹介する『リライト』は、そうしたジャンルの枠を軽々と飛び越えてくるような、不思議な魅力を持った作品でした。

主演は池田エライザさん。脚本はヨーロッパ企画の上田誠さん、監督は『ちょっと思い出しただけ』『くれなずめ』の松居大悟さん。

この時点でもうワクワクしていたのですが、実際に観てみると、その期待をはるかに超える“深さ”がありました。

最初は「転校生とのひと夏の恋か、よくある青春ものかな」と思って観ていたのですが、途中から何度も予想を裏切られ、観終わる頃にはすっかり引き込まれていました。

映画館を出てもしばらく静かな余韻が残っていて、その感覚がまだ消えないうちに、こうして感想を書いています。

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あらすじ(ネタバレなし)

まず話がめちゃくちゃ上手くできています。

物語の舞台は、広島県尾道。高校三年生の夏、美雪のクラスにひとりの転校生・保彦がやってきます。彼は、ある一冊の小説に心を動かされて未来からやってきた“300年後の人間”でした。

未来人であることを美雪に打ち明けた保彦は、ある計画のために彼女の協力を求めます。ふたりは少しずつ惹かれ合い、やがて秘密を共有するようになります。

しかしこの物語は、単なる“青春と恋の物語”では終わりません。
時間を飛び越えるという大胆な設定の中に、「なぜこの出来事が起きたのか」「本当にこの世界は予定通り進んでいるのか」といった問いが次々に立ち上がり、観客は思わぬ深みへと誘われます。

過去と未来が交錯し、登場人物それぞれの“選択”が絡まり合うなか、やがて物語はある一つの結末へと向かっていきます。

見どころ①:ジャンルが混ざっているのに、雑にならない

『リライト』の面白さは、一言で説明できないところにあります。

青春映画だと思っていたら、突然ミステリーの顔を見せてくるし、笑えるコメディかと思えば、ぞくっとするようなSF展開に巻き込まれていく。普通ならバラバラに感じそうな要素が、なぜかこの映画ではすべて自然につながっています。

その鍵になっているのが脚本

上田誠さん(ヨーロッパ企画)の手による物語構成は、観客を退屈させないどころか、シーンが切り替わるたびに「次は何が起きるんだろう」とワクワクさせてくれます。

ジャンルが混在しているのに、それぞれの要素が互いにぶつかり合わない。むしろ「青春×SF」「コメディ×サスペンス」というように、かけ算で膨らんでいく印象でした。

観終わったあとには、「これは何の映画だったんだろう?」という疑問より、「いろんな感情を味わわせてもらったな」という満足感の方が強く残ります。

見どころ②:池田エライザという存在が、すべての軸を支えていた

この映画を語るうえで、池田エライザさんの存在は欠かせません。彼女が演じる美雪というキャラクターは、高校生としての未熟さと、10年後の大人としての静かな成熟、その両方を背負っています。

そのふたつの時間を、ひとりの俳優が演じて違和感がないというのは、正直すごいことです。

最初は「29歳でさすがに女子高生役は無理があるかも」と思っていたのですが、あまりに綺麗すぎてそんな不安は一切なし。

さらに、彼女の目線や話し方、声のトーンから「その瞬間を生きている人」が感じられるんですよね。

大人になった美雪の静けさも良い

過去の自分を待ち続ける姿、約束を信じて本を出版する決意、そのすべてに説得力がありました。

感情を爆発させるわけではないけれど、見ているこちらは胸の奥をぎゅっと掴まれるような思いになります。

池田エライザさんの演技がなければ、この映画の感情の深さは半分になっていたかもしれません。彼女がそこに立っていることで、過去と未来がきちんとつながって見える。そんな存在感でした。

見どころ③:語られないからこそ、心に残る演出

『リライト』を観ていて強く感じたのは、「言葉で説明しない場面がとても多い」ということです。

ラストシーンもそうでしたが、普通ならセリフで解決しそうな場面でもあえて説明を省いて、表情や間・風景で語ってくる。その“余白”が、この映画に深い余韻を残しています。

印象的だったのは、10年後の美雪が実家の自室で、過去の自分が来るのを静かに待っているシーンです。

何も起きない時間が流れるだけなのに、彼女の表情や背中から、いろんな感情がにじみ出てくる。何を思いながらそこに座っていたのか、観客はそれぞれに想像することになります。

また、花火の夜や、ラベンダーの香りが漂う場面、未来の自分が過去の自分にかけた“あの言葉”。どれも説明されないまま、映画は静かに進んでいきます。でも、その“語られなさ”こそが逆にリアルで、心に引っかかり続けます。

すべてを言葉で整理するのではなく、観客が自分の中で考え、咀嚼し、感じる余地を残してくれる。だからこそ、この映画は観終わったあとにもずっと頭の中に残り続けるのだと思います。

見どころ④:「リライト」というタイトルにすべてが詰まっていた

最初は正直、「リライト」というタイトルはちょっと地味にも感じました。けれど、観終わってからこのタイトルを思い返すと、本当にうまくできていると思います。物語全体が、この一言に集約されていました。

「リライト」は直訳すれば“書き直す”という意味ですが、映画の中ではそれが単なる物語の構造だけでなく、登場人物たちの人生の選び方そのものと重なっていきます。

メッセージ性がかなり強い映画

過去に起きた出来事を変えることはできなくても、それをどう捉え直すか、どんな意味を持たせるかは自分次第。そんな静かなメッセージが、この映画の芯にありました。

誰かの言葉や、ひとつの出会い、何気ない決断が、時間を超えて何かを変えていく。美雪が小説を書くことで生まれる“もうひとつの未来”は、まさにリライトされた世界です。
でも、それはやり直しではなく、選び直しなんだと思います。

だからこそ、このタイトルは映画の内容を説明するための言葉ではなく、観終わったあとにじんわりと効いてくる“余韻の引き金”のように感じました。

見どころ⑤:観終わったあと、自分の人生をもう一度眺めたくなる映画

『リライト』を観終わったあと、ふと自分の過去のことを思い出していました。

自分の場合だと、

  • 中高時代の部活や試験
  • うまくいかなかった人間関係
  • バイト

あのときは必死だったけど、今になってみれば全部、自分の一部になっている。そんな感覚が、映画の中の美雪と重なったんです。

作中で描かれるのは、たったひと夏の出来事です。でも、それが10年後の人生にどう影響を与えるかが丁寧に描かれていて、「自分にもそういう瞬間があったかもしれない」と思わせてくれます。

たとえば、

  • 実家で出迎える母親の何気ない優しさ
  • 地元の風景
  • 久しぶりに会った同級生たちのテンョンの違い

それらがすべて、美雪という人物の“今”をつくっているという実感が、観る側にも伝わってきました。

この映画を観たことで、「あのときの出来事も、実は悪くなかったのかもしれない」と少しだけ思えるようになりました。自分の過去も未来も、見方を変えれば書き直せる。そう思わせてくれる作品でした。

まとめ

いかがでしたか?

『リライト』は、一見すると青春と恋愛が中心の“よくあるタイムリープもの”に見えるかもしれません。

けれどその中には、時間をテーマにしながら「人が人生をどう選び直すか」という、とても静かで本質的な問いが込められていました。

笑えるシーンもあるし、切ない別れもある。未来を信じる気持ちと、過去を受け止める勇気もその全てが丁寧に描かれていて、観ているこちらも自然と、自分のこれまでを振り返りたくなってしまいます。

  • 過去は変えられないけれど、意味は変えられる。
  • 時間は巻き戻せないけれど、向き合い方は変えられる。

そんな感覚を優しく届けてくれる映画でした。

誰の人生にも「書き直したいページ」はあると思います。だけど、この映画を観ると「それも含めて今の自分だな」と思える。不思議な後味が残る、静かで優しい一本でした。

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